城山町でも街道筋から離れている部落では、昔からの珍しい風習がたくさん残されて いました。明治30年頃のことです。 ある日、中沢部落のおばあさんが肩が張ると言っていたかと思うと、急に苦しみ出し て気絶してしまいました。さあ、大変、お医者さまは一里も二里も行かないと頼めない 不便な土地だから急病人には間に合いません。みんな素人ばかりだから打つ手があり ません。そこで、わらをもつかむ思いで、昔からよいといわれることは何でもやってみよ うということになりました。深く掘った井戸の中に向かって病人の名を呼ぶと、地獄へ行 く途中から引き返してくるというのです。 さっそく近くの井戸でおばあさんの名を大声で呼び始めました。1人では声が続かな いので、2〜3人で代わる代わる呼びました。するとどうでしょう、おばあさんの枕元につ いていた人たちから「おーい、おばあさんが気がついたぞう」と叫ぶ声が聞こえてきまし た。井戸で大声で呼びかけていた連中は「助かったか、よかったよかった昔の人はウソ は言わねえ」と感心しました。